あきらからの電話から約2週間経つ。
12月中旬。
俺は今、任されている仕事の現場の近くの喫茶店に美奈と一緒にきた。
都内と言っても、23区と比べるとかなりの田舎。ここも本当に東京なんだと思えてくる。
大きな通りがひとつ。だけど、周りにビルはほとんどなく、小さな商店街のように見える。
俺たちはその通りにある喫茶店に入った。
ふたりで頼んだコーヒーが運ばれてきた。俺はそれを口にしながら、美奈の話を聞いている。
ふと・・窓の外に目をやると、クリスマスムードが漂う通りは街行く人が寒そうにコートに手を突っこんで早足で歩いている。
そこへ・・見覚えのある人が同じようにコートに手を突っこみながら歩いている・・・・・。
俺は、その瞬間から美奈の事を忘れて、走り出した。
道路を挟んだ向かい側に居るその人を見失わないようにちゃんと目で追いながら、俺は走ってその人の元へ駆けて行った。
そしてその人物の手を掴むと、びっくりしたような顔をして俺を眺める・・・。
「牧野・・・・・・久しぶり。」
「花沢類・・・・・。」
やっと見つけた。牧野が都内に居たのがびっくりした。
少し見ないうちにキレイな女性になっていた牧野。
肩まで伸びた黒髪が風に靡いている。
「牧野・・・綺麗になったね。」
「ありがとう・・・・・・。」
牧野は俺から目線をはずして・・・・そう答えた。
たくさんの書類が牧野の腕に抱かれている。今は仕事中なんだろう。
「類!」
美奈が俺の名前を呼びながら俺の元へ駆け寄ってくる。
その瞬間、牧野は俺の腕を振りほどいた。
牧野が美奈をじっと見た。
「もう、類・・いきなり走っていくから・・・どうしたのかと思ったよ・・・。」
美奈は息を切らしながらそう言った。
「ごめん。」
俺がそう答えた時に美奈はやっと牧野の存在に気づいたようだった。
「類?お友達?」
「うん・・。」
「はじめまして。私、河井 美奈と申します。」
「はじめまして。あたしは牧野 つくしです。」
「雑誌で二人を拝見しました。とてもお似合いだと思います。もうすぐ婚約するとか・・・。」
牧野は美奈を見ながら話をした。
「ちょっと早いかもしれませんが・・・・おめでとうございます。幸せになってください。」
牧野は美奈に少し微笑んでそう言った。
「ありがとう。」
美奈はそう言っていた。
その次は俺を見て
「花沢類・・・・・おめでとう。勝手に居なくなってごめんね。だけど・・・今はここで充実した日々を過ごしてるから・・・・・。だから心配しないで。花沢類?美奈さんを幸せにしてあげてね。すごく可愛い方だから。」
牧野はそう言った。
「牧野・・・・・・。」
本当にそう思ってるの?おめでとうって心から言ってるのかな?
「じゃあ、あたし仕事あるから・・・。」
そう言って牧野は人ごみの中へ走り去って行った。
「牧野!」
俺がそう叫んだ時にはもう牧野の姿は見えなかった。
牧野・・やっと会えたのに・・・また俺は、あんたの手を捕まえておく事出来なかった。
それから俺と美奈は店を変えて、コーヒーを飲んだ。
俺は・・・・もう牧野のことを隠しながら美奈と付き合って行く事は出来ない・・・。
美奈に全てを打ち明けよう・・・・・。ごめん・・・・美奈。だけど・・・許して。
もう大切な人を失いたくない。
今度はこの手で繋ぎとめておきたい。
牧野がここのあたりに住んでるって分かった以上、いつか・・・・きっと会いに行く。牧野を探し出すから・・・・・。
そう思いながら・・・・美奈を見つめ、真実を話す覚悟をした。
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